続きです。
ウプサラ議定書提案について紹介した記事
03/10/02CNN:World oil and gas 'running out'
http://edition.cnn.com/2003/WORLD/europe/10/02/global.warming/index.html
の中では、このピークオイル問題があるため、IPCCが指摘するような地球温暖化のシナリオにはならないだろう、とウプサラ大のKjell Alekett教授は語っています。
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ウプサラチームは残りの石油とガスは石油換算で3兆5千億バーレルであり、IPCCの主張する5兆〜18兆バーレルではないと語った。
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と、かなり少ない量の推計がありうることを示しています。
また、WeeklyBlogのTakaさんによる記事
地球温暖化4 温暖化を問題にするほどの化石燃料は存在するか でもこの問題を取上げています。
さて、IPCCの第三次報告の試算では、2100年までの化石燃料資源と温暖化との関係はどうなっているでしょうか。
IPCC第三次報告の中ではこのグラフが役に立ちそうです。
http://www.ipcc.ch/present/graphics/2001syr/large/01.20.jpg
このグラフの右から2番目のA1F1からB1までの6種類の青い棒グラフが、IPCCが2100年時点で消費されていると予測している化石燃料の累積量(炭素換算トン)です。(各種の社会経済シナリオに応じて、特に温暖化対策を採らない場合)
一方左端の3種の棒グラフが、石油石炭天然ガスの各種埋蔵量予測です。
下から紫−利用可能な確認埋蔵量/オレンジ−最大予測資源量/青−従来型ではない資源(オイルシェールやオイルサンド、炭層メタンなど)の量を示しています。
この二つを比較すれば、A1F1などエネルギー大量消費のケースでは、これまでの埋蔵量予測においても、石油天然ガスは未確認埋蔵量を含めほぼ全量を使い切ってしまっているだろうことがわかります。つまり最も豊富にあり、最も「汚い」石炭の多くを使っていくとするシナリオが想定されていることが分かります。
ピークオイル仮説の中の価格高止まりの影響を想定していたかどうかは分かりませんが、いずれ石油天然ガスが本当に無くなってしまって、さらに石炭資源に手をつけて、石炭液化などにより液体燃料にして輸送燃料などを賄っているというような技術的な飛躍が21世紀のうちに起こっていなければおかしいということを示しています。
つまり、技術開発路線で石炭の液化などの手法でピークオイル問題を解決できたとしてもそのときに残る環境面の制約が温暖化問題である、という位置づけとなります。
そして、ウプサラチームが指摘する、残りの石油とガスが最低評価時のさらに7割程度しかないのだという評価が正しいのであれば、この石炭をどんどん使う方向への技術的な飛躍はより早期に起こることとなるでしょう。
この石炭消費への転換ができなければ…そのときはピークオイルシナリオの一番悲惨な想定が現実のものとなることと、その結果として温暖化が食い止められることになります。
ここまでは、表題の質問への答えは、ピークオイルの資源制約の方が早い、というものでしょう。
ですからピークオイルシナリオを前提とすれば、果たして本命と考える「省エネ」や「自然エネルギー開発」が、「汚い」石炭の消費拡大の転換と価格競争で張り合えるのかどうかということが、温暖化対策では重要だということになります。
自然エネルギーは別に従来の安い石油を相手に普及競争をする必要がないのだ、ということはある意味では福音であるといえるでしょう。
一方、C&C(Contraction & Convergence、収斂と収束)を提唱している環境NGO、
グローバルコモンズ研究所 のオーブリー・マイヤーは、英国ハドレー研究センターの報告に基づいて、炭素サイクルの正のフィードバック分を考慮すれば許容できる排出量が大幅に下がるため、石油と天然ガスの枯渇を考慮に入れても、温暖化対策のためには化石燃料消費へのより厳しい制限が必要としています。(
C&Cの日本語訳)
一つには、液化のためのエネルギーなどより多くの「汚い」石炭を利用することになり、その分同じエネルギー消費に対するCO2の排出量が割増しになるからだと考えられます。
http://www.gci.org.uk/memos/Growing_Problem.pdf ここに、WIN&MAC用の解説ソフト(実行ファイル自動解凍形式)のリンクがあります。どのくらいの削減が必要か、をわかりやすく示した(英語ですが)対話型ソフトですので使ってみてください。
ここでコントラクション収斂とは、450ppm安定化のようなぐいぐい締め付ける厳しい削減がグローバルの目標として必要なこと、そしてコンバージェンス収束とはそれを世界的に達成するために、ある猶予期間をおいてから南北格差を失くして人口一人当たりの公正なシェアでの割当にしてしまうという概念です。
(実際にはそれに加えて真にグローバルな排出権取引を行うことで、北から南への資金還流を行わせることを制度として提案しています。) ということで、最近の気候カタストロフィに関する知見に基づいて、非常に厳しい長期気候目標を国際社会が設定できた場合にだけ、温暖化問題の方がピークオイル問題よりも早く厳しい規制がかかりうる状態になるということが言えます。
ジョージ・モンビオが12/3のロンドンデモで発言したスピーチの内容が、かなりな現実味を帯びて聞こえてくるようになった気がします。やーれやれ。
後日記:
ジェレミーレゲットの新著「Empty Tank(あるいはHalf Gone)」などの本の中でピークオイルと気候変動について書かれているそうです。
Climate Change Expert’s New Book On Oil Depletion
http://www.energybulletin.net/11790.html
http://www.countercurrents.org/po-bliss211205.htm
レゲットの見解ではピークオイルは2006-10年の間のどこかだということで、環境保護派はピークオイル問題の重要性を無視したり否認しがちだ、と述べているとのこと。
環境NGOsのこのあたりの見解を見て回るのも意義がありそうですね。
後日記:グリーンピースジャパンでは、
1997年に一旦作っていたカーボンロジックという文章を、2004年に再度編集更新を加えた版を出していますね。
”化石燃料の確認可採埋蔵量は、すでにわかっているだけで炭素換算量で1兆トン以上ある。が、計算によればこの確認可採埋蔵量の75%は、利用(燃焼)できないことになる。たとえば、石油の燃焼分
だけで生体学的限界を超えてしまうほどの資源の量が存在している。 よって問題となるのは、石油資源が枯渇するかどうかではない。枯渇以前の問題として、今後どのようにして石油の採掘および利用を制限していくかである。新しい原油採掘権が付与されるたびに、採掘可能な原油量が増加してゆき、その結果、気候変動に関する生態学的な限界値を守ることは一層難しくなる。”
としています。
コメントをいただきました。
Posted by dai at 2006-02-02 19:39:51
後日記に関してコメントします。
市民エネルギー調査会の報告書<
http://www.isep.or.jp/shimin- enecho/presen_pdf/0801_report050422.pdf>を発表した際、ある方から「アメリカでは1バレル100ドルと言った可能性が議論されているのに対して、市民エネルギー調査会の想定価格(2030年でバレル35ドル)は低すぎる」との指摘をいただきました。
私たちが怖れたのは「高い石油価格を想定することで、自分達の都合のいいように自然エネルギー普及が高くなるシナリオを描いた」という批判です。そういう批判を受けないために、低めの「常識」を使っています。
「環境保護派」にとっては、ピークオイル論者からの批判はあまり痛くないという、単にそういう話だと思います。
Posted by SGW at 2006-02-03 00:08:55
daiさん、どうもです。
市民エネルギー調査会の研究成果も、あまり影響力を出せていないきらいもあるかと思いますが、現実の方が想定よりも激変している、というのは強調できるところでは?
今はもうバレル70ドルくらいですし、40ドル以下の石油は使い尽くしたかもという論をとれば、精密な時期がいつかは別にして、ある将来から段階的に上昇するという石油価格設定の方が現実をシミュレートできるシナリオなのだといって乗り換えればよいのではないでしょうか。
Posted by rita at 2006-02-03 16:52:43
こんにちは。
オイルピークと温暖化、とても興味のある問題です。
ピークに関し、生データをグラフにする(分かりやすくする)のが得意なスチュワート・スタニフォードがthe oil drum でちょうどシリーズでとりあげているところです。
5回連載のまだ2つまでですが、これで一冊の本になりそうなほどの力作です。
http://www.theoildrum.com/story/2006/1/27/44052/9337グラフを見るだけでもかなり分かりやすいです。
テーマ:温暖化 - ジャンル:ニュース